永井荷風の濹東日記を読み終えた。小学生の頃に江戸川乱歩の少年探偵団を愛読していた自分にとっては、すんなりと入っていける内容だった。でも、きっと10代や20代前半に読んでも、この良さはわからなかっただろうな。岩波文庫版で読んだけど挿絵も良かった。父方の実家が隅田川近くで母方が江戸川区なため、小さい頃からこの小説の舞台である東京の下町には愛着がある。今度、その辺りを改めて散策してみよう。
ところで、永井荷風がずっと東京(江戸)に住んでいたものの文化、気質と地方から上京してきたものの違いを書いていて驚いた。東北育ちの自分は、東京は小さい頃から頻繁に訪れていたし、従兄弟なんかはずっと東京育ちで東京人を見てきたつもりだから、この永井荷風の考えには非常に共感するところがあった。東京には東北、九州などの地方と同じく、昔からの東京の文化がきちんとあると自分も思っていたから。あまり東京に縁がない人、テレビや雑誌で渋谷、六本木、お台場なんかの最新スポットしか知らなかたり、都会人で冷たいと思っている人達からすると想像つかないらしいけど。だから、そういう人達と会話していて東京批判のようなことがあると思わず擁護することがあるんだよな。もうひとつ、明治育ちと大正育ちの違いについても書いていた。これも昔から人は「最近の若いもんは」ってことなのだろう。ジェネレーションギャップというものは、きっとなくならないのだろうな。東京で生まれヨーロッパを観てきた明治育ちの永井荷風が改めて東京を観察し、其の遷り変わりをこの書いた小説は、好きな小説のひとつになった。読みやすさも長さも調度よいしね。ちなみにストーリー自体は初老の男と私娼窟の娼婦との恋愛模様です。

次に読み始めた本

ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン (新潮文庫)

ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン (新潮文庫)

いまさらなぜソークラテースなのか。哲学本なのか。本屋で目に付き、少し読んだら読みやすそうだったのと、最近読んだ三島、澁澤の影響なのでしょう。